再エネのコストは下がり、負担は可能である。

costtrend

(by paco)エナジーシフトを進めるためには、原発、火力発電を順次縮小し、再生可能エネルギーを増やしていく必要がある。

絶対量は充分にあることは確認したが(Click!)、

コスト面について、どのように考えればよいか、確認したい。

■再エネの成長とともに、単位エネルギーあたりの負担は下がる。

発電所は、いわゆる設備産業にあたり、設備に関わるコストは量産が進めば下がる傾向にある。

単純にいえば、現在は高い再エネも、じょじょに利用を拡大していけば、コストが下がり、負担が小さくなると考えることができる。

では現実的になどのように見ればよいか。太陽光パネルで見てみる。

wikipediaによると、太陽光パネルでは「普及に伴い、ほぼ経験曲線効果に従って価格が低下している。世界的には2012年頃には、条件の良い地域から順次グリッドパリティ(系統電力との等価)を達成し、価格競争力を有し始めると見られている。」これは主に欧州の情報に基づいている。

この記事中に「2008年末の時点で比較的高出力(125Wp以上)のモジュールについては需要逼迫による価格の高止まりが数年間続いていたが、2009年からは再び低減傾向である」とある。つまり、パネルの価格は技術開発や量産効果だけでなく、需給バランスでも変わるため、ある時期下げ止まっているように見えても、大きなトレンドは変らず、暫減するという経験則が当てはまるのだ。

日本でも、政府系の独立行政法人産業技術総合研究所がほぼ同じ研究結果を発表している。「設備の製造コストは、これまで「普及量が2倍になるとだいたい2割安くなる」という経験則に従って推移しています。」

どこまで下がるかという限界値については言及されていないもの、欧州では「パリティ・グリッド」、つまり他の電源とほぼ同価格になり始めているので、競争力を持つところまでコスト低減は可能といってよい。

ここまでは太陽光パネルのコストの話だが、風力や他の再エネでも同じ原則が当てはまるだろう。実際、風力はパネルより早く、コストダウンが起きている。

「風力発電で使われる風車は2010年現在、定格出力1.5MW(1時間で最大1500kWの出力が可能)や2.5MW(同2500kw)が世界的に見てもスタンダードと言えます。風車の出力は風車の受風面積(ブレードの回転する円の面積)に比例するので、風車を大きくすればそれだけ多くの電力を得ることが出来ます。現在、世界で最大の風車は定格出力6MW直径126mにもなります。風力発電の普及は、設備の大型化によるコストダウンによるものだとも言われています。」(→Click!

風車のコストダウンの基本的な方法は、風車の大型化だ。大型風車にはデメリットもあるが、これは別の記事で検討するとして、今回はコスト面のみを考えておく。

■R&D、効率アップ、設計技術など、開発ポイントは多数ある

具体的にはどのようにコストダウンが進むだろうか。同じく、太陽光パネルの例で見ていく。

各社、パネルの発電効率の向上にしのぎを削っている状況だが、たとえば、パナソニックでは今年2月、“世界最高水準”変換効率17.9%の住宅用太陽光発電システムを発売している。光の反射を押さえ、阻止に充分に光が当たるようにするなどの技術開発が効果を上げている。こういった「目の前の技術開発」もまだまだやる余地があるだろう。

この点は、自動車のガソリンエンジンの効率アップを見れば、地道な努力が長期的に大きな結果をもたらすことがわかる。マツダが現在順次発売中の「Skyactive」技術では、ハイブリッドを使わず、純粋なガソリンエンジン車で30km/Lと、トヨタプリウスの第二世代に匹敵する燃費を出せるようになった。地道な開発は決して侮れない結果を生む。太陽光パネルでも今後同じことが起きるだろう。

一方、興味深い研究も出ている。これはアメリカの中学生の研究だ。現在のパネルは、小さなセルを平面的に配列しているが、これをもっと効率的に光を集めるような確度に配置したらどうなるかを、木の葉の配列にヒントに研究したものだ。木の葉の配列を数学的に研究してふぃぼなっちすうれつという配置に擬似的に置き換えたところがこの研究のミソ。「フィボナッチ数列を用いた発電装置の電力発生量はフラットパネルと比較して 20% 多く、また太陽光を集める時間も 2時間半長かったとのこと。また冬期にはその差は更に開き、50%多くの電力を作り、太陽光を集める時間も50%増しであったとのこと。」

同じセルとを使っても、どのように配置するかで効率が変わる。僕たちはまだ、自然の力の利用の仕方を、充分に知り尽くしてはおらず、そういった研究でまだまだ効率を上げられることを示している。

一方、もっとドラスティックな研究も進んでいる。

「エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は31日、EUと共同で、次世代太陽電池の基礎技術開発を行うと発表した。それぞれで産学連携の研究チームを組み、太陽光の電気変換効率を世界最高の45%以上へ引き上げるため、素材開発などで協力する。研究成果の2030年以降の実用化をめざす。」

NEDOがやってきた多くの研究は、結果的にほとんど実を結んでいないので、この話もあまり期待はできないが、少なくとも変換効率45%に向けた努力は進められているということだ。

さらにもっと興味深い提案もある。

現在、太陽光パネルはシリコンでつくられている。シリコンはケイ素であり、元素としては無限に存在しているが、純度を高めるために大きなエネルギーが必要で、これがコストをあげている(*)。これをより加工性のよい金属でつくれれば、大幅なコスト削減になる。この研究も、日本で進んでいる。金沢大学では「銅板と亜鉛 を組み合わせた新型太陽電池の基板を開発した。従来のシリコン製に比べ100分の1の費用で製造できる」。(→Click!

まだ発電効率は3%と低いが(現状のシリコンパネルで10?12%程度)、コストが安いので、競争力が出るだろう。

*太陽光パネルも風力発電も、製造段階でエネルギーが必要でCO2が発生するが、できあがったパネルや風車がつくるエネルギーで回収可能で、おおむね2?3年で製造段階でのCO2破壊収支、その後はCO2を削減できる。(→Click!

一方、やや話はずれるが、一般的な発電コストの計算方法にも疑問が呈されている。

東京・八王子に住むあるパネルオーナーの試算によれば、太陽こ発電のコストとしてよく出てくる46円/kwhは、実質29.7円/kwhだという。46円の計算には、パネルを全額、4%の20年ローンで購入したという計算だ。これを現金購入したとして計算すると、単純に29.7円になるというわけだ。(→Click!

と言うことで、そもそも「高い」という時の値段の差自体が、金利まで含んでいる点を考慮しておく必要がある。つまり、金融業界のもうけを含んだ値段なのだ。

■反論に答える

以上を見ておくと、以下のような指摘は外れていることがわかる。

「これを見ても分かるとおり、この10年間、爆発的に数は増えたけれども、コストは下がっていない。世界的に見ると、もっと爆発的に増えているのに、なぜか発電コストは横ばいだ」(→Click!

このような問題を考えるときは、大きなわく組では「設備コストは量産すれば下がる」という経験曲線を前提にした上で、「もしそれがあてはまらないなら、その合理的な理由があるのか?」と考えていくとよい。ネット上にはたくさんの情報があるので、最初に「コストは下がっていない」という情報に出会うと、信じてしまいたくなるが、まずは大きな原則を捉えて、それを検証する態度を持てば、正しい知見を獲得することができる。

もうひとつの反論を検証しておく。

ドイツの固定価格全量買い取り制度を批判して、「消費者は 2028 年までの長期にわたって毎年およそ 25億ユーロの支払債務を負い続けることを示している。」とある。1ユーロ105円で考えると2600億円ほどになる。(→Click!の「ドイツは間違った:全量固定価格買取制度(フィード・イン・タリフ)は正反対の結果」)

この記事の筆者はこの2600億円を高いと言いたいようだが、果たしてそうか。日本では電源三法によって、電気料金から税金が集められ、毎年そのほとんどが原発立地に支払われている。この税の総額は4855億円(2003年)になる。(→Click!

つまり、日本は原発を毎年4800億円を投じてつくり、維持してきたことを考えると、これまでの電源をつくるためにも、社会は多額の負担を広く薄くしてきたことになる。その額は、ドイツが固定価格買取制度で負担している額よりずっと小さく、しかもこの電源三法による額は、原発に投じられる金のごく一部に過ぎない。

このように見ると、再エネにコスト負担をしていくことは、これまでの電源投資と比べて高いとはいえず、社会的にも負担可能とみるべきだ。このような考えからドイツではフィードインタリフを進めてきたのであり、これを「ドイツのやり方は失敗」と指摘するのは間違っている。